唾液腺嚢胞は、唾液腺やその導管が傷害を受け、唾液が漏出して周囲組織へ貯留や炎症が生じ、袋状の構造物を形成した状態をいいます。唾液腺は、粘稠性の高い唾液を産生する下顎腺や舌下腺、漿液性の唾液を産生する耳下腺や頬骨腺があります。唾液腺嚢胞の発生部位は、頚部、舌下(ガマ腫)、咽頭部、頬部(まれ)に生じ、無痛性の腫脹が認められます。
原因は、唾液腺やその導管が傷害と考えられていますが、直接的な原因が分からない事が多くあります。
頚部や舌下、咽頭部に液体を含んだ袋が認められたら、感染に注意しながら液体を抜去します。粘稠性の高い液体が認められたら、唾液腺嚢胞を疑います。感染や炎症が生じていないか、細胞診も実施します。
内科的に唾液を抜去してもまたすぐに溜まってしまうため、嚢胞が形成されている左右どちらか一方の唾液腺を外科的切除する必要があります。
唾液腺嚢胞の多くは頚部や舌下に認められ、これらの部位に関連する唾液腺は、下顎腺や舌下腺となります。再発を出来るだけ生じない様にするため、下顎腺および導管に沿って舌下腺を舌神経より頭側まで切除する必要があります。
2週間前より首の膨らみが気になるとの事で受診されました。頚部超音波検査にて左腹側に液体貯留を伴う袋状構造物が認められました(写真1)。液体を穿刺抜去すると粘稠度の高い液体が採取され、唾液腺嚢胞疑いと診断致しました。その後、1週間後に再度液体を抜去しましたが、すぐに再発したため、左側下顎腺、舌下腺切除および頚部嚢胞切除を実施致しました。切除した組織の病理組織検査結果は唾液瘤だったため、頚部唾液腺嚢胞と診断致しました。その後は再発もなく良好な経過を過ごしています。
頚部の腫れに気付いたとの事で来院されました。頚部の超音波検査にて、唾液腺嚢胞を疑う嚢胞様構造物が2カ所認められ、1カ所は咽頭部に突出して認められました。
液体を穿刺抜去すると粘稠度の高い液体が採取され、唾液腺嚢胞疑いと診断致しました。その後、すぐに再発したため、左側下顎腺、舌下腺切除を実施致しました。のどの中にある咽頭部嚢胞に対しては、嚢胞を一部切除し、内腔に溜まった唾液をきれいに吸引し、嚢胞内腔と口腔粘膜を縫合する造袋術を実施致しました。切除した組織の病理組織検査結果は唾液瘤だったため、咽頭部唾液腺嚢胞と診断致しました。その後は再発もなく良好な経過を過ごしています。
口の右側を気にしているとの事で来院されました。口腔内を確認すると、右舌根部に波動感を伴う腫瘤病変が認められました。穿刺吸引を行ったところ、粘稠度の高い液体が採取され、舌下部唾液腺嚢胞疑いと診断致しました。
右側下顎腺、舌下腺切除を実施致しました。舌下部嚢胞に対しては、嚢胞を一部切除し、内腔に溜まった唾液をきれいに吸引し、嚢胞内腔と口腔粘膜を縫合する造袋術を実施致しました。切除した組織の病理組織検査結果は唾液瘤だったため、舌下部唾液腺嚢胞と診断致しました。その後は再発もなく良好な経過を過ごしています。
「首が腫れている」「舌下にできものが見られる」「喉の奥にできものが見られる」「唾液腺嚢胞が認められると言われた」などでお困りの際は、当院に是非気兼ねなくご相談下さい。