発熱、元気食欲ない(前立腺膿瘍)

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case7.発熱、元気食欲ない(前立腺膿瘍)

前立腺膿瘍とは

加齢に伴い、前立腺は精巣から過剰に産生されたエストロジェンにより、前立腺肥大を生じ、進行により前立腺の分泌液を貯留した前立腺嚢胞を形成します。前立腺膿瘍とは、この嚢胞内で細菌感染が生じ、膿液が貯留した状態をいいます。

症状は、血尿や膿尿、排尿および排便障害、排尿痛、重篤化すると元気や食欲低下、発熱が認められ、時には腹膜炎や敗血症、全身性炎症反応症候群、DICへと進行し亡くなってしまう事もあり、注意が必要です。

前立腺膿瘍の診断

診断には超音波検査が有用です。超音波検査にて、前立腺実質内に嚢胞を確認し、超音波ガイド下による穿刺により嚢胞内の液体を回収します。回収した液が膿液である事を確認することで、前立腺膿瘍と確定診断できます。

前立腺膿瘍に対する治療

内科治療

内科治療は、可能であれば細菌培養検査の結果に基づいた抗生剤の投与に加え、膿液排出とTea Tree Oil注入法を実施しています。

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超音波ガイド下で膿液を穿刺吸引し、同じ嚢胞内に吸引された膿液と同じ量のTea Tree Oilの注入を実施します。 Tea Tree Oil は、強い抗細菌・真菌作用および組織修復作用を持つオイルであり、大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌など様々な細菌感染による患部への局所治療に適応できると言われています(河上 The journal of veterinary medical science 2006)。

外科治療

手術は、膿漏出により腹膜炎が生じている場合や、慢性経過で内科治療を行なっても再発する場合に検討され、患者の全身状態が安定化した後、実施されます。
当院では、前立腺縫縮術という前立腺内の隔壁を鈍性に除去し、しっかり排膿させた後、残った外壁同士をマットレス縫合し縫縮する術式を実施しております。

実際に治療した症例

症例1:ミニチュアダックスフンド、17歳、未去勢雄

2日前より嘔吐や流涎、下痢、食欲低下を主訴に来院されました。 血液検査にて、白血球数や炎症マーカーであるCRPの上昇が認められました。 超音波検査にて、前立腺内に多発性嚢胞が認められ、穿刺を実施したところ膿液であったため、前立腺膿瘍と診断しました。

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前立腺内に点状の浮遊物を伴う嚢胞が多発して認められる(矢印)

症例は高齢であり、腹膜炎を疑う所見は認められなかったため、まず内科治療を実施する事となりました。 前立腺膿瘍3カ所に対して膿液抜水し、その後Tea Tree Oilの注入を実施しました。また、輸液や細菌培養検査に基づいた抗生剤、胃薬や制吐剤などの投薬を実施したところ、徐々に元気食欲の改善、C R Pや白血球数の改善が認められ、8日間の入院治療で退院としました。 エコー上、嚢胞は1カ所完全に消失はしませんでしたが、0.5cm大に縮小し、他は完全消失が認められました。6週間の抗生剤投薬後、治療終了としました。その後も元気食欲もあり、良好な経過を過ごしております。

  • イメージ 前立腺内の嚢胞はほとんど消失している。
ミニチュアダックスフンド、13歳、未去勢雄

昨日より、元気消失、嘔吐、下痢、排尿障害が認められたため、来院されました。
血液検査にて、白血球数や炎症マーカーであるCRPの上昇が認められました。超音波検査にて、前立腺内に嚢胞が認められ、穿刺を実施したところ膿液であったため、前立腺膿瘍と診断しました。

  • イメージ 前立腺内に点状の浮遊物を伴う嚢胞が認められる(矢印)

全身状態が悪く、超音波検査にて前立腺周囲の脂肪が高エコーであったため、腹膜炎を疑い、輸液、抗生剤投与で状態を安定させた後、外科手術(前立腺縫縮術および去勢)を実施しました。

  • イメージ 尿道カテーテルを挿入し、前立腺尿道部に注意しながら、縫縮するため前立腺嚢胞部に糸をかけている
  • イメージ 前立腺にかけた糸を結紮し、前立腺を縫縮させている(矢印)

術後3日目で食欲や元気が戻り、その後再発も認めず、良好な経過を過ごしております。

「元気、食欲がない。」
「血尿や頻尿が認められる。」
「排便困難、排尿困難、排尿痛が認められる。」
「前立腺膿瘍と診断された。」
などでお困りの際は、当院に気兼ねなくご相談下さい。

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047-409-3906
(祝日、日曜日午後休診)