元気、食欲なくなる、急性腎不全(尿管結石)

  • TOP » 
  • 治療実績 » 
  • 元気、食欲なくなる、急性腎不全(尿管結石)

case3.元気、食欲なくなる、急性腎不全(尿管結石)

尿管結石とは?

  • 尿は左右腎臓で作られると、細い尿管を通って膀胱へ流れていきます。尿管結石は、もともと腎臓で作られた腎結石が、尿と一緒に尿管へ流れてしまい、膀胱へ流れず尿管内で止まってしまった状態の結石をいいます。
  • 尿管はとても細いため、尿管結石により尿が膀胱へ流れず、尿管内や腎臓内に尿がうっ滞してしまうと、急性腎不全を生じてしまいます。
  • 猫ではほとんどがシュウ酸カルシウムで、犬では細菌感染の関連が多く、シュウ酸カルシウムとストラバイトが同程度の発生と言われております。

尿管結石の症状

急性腎不全を生じると、元気や食欲低下、嘔吐などの症状がみとめられます。しかし、片側の尿管結石が閉塞し、もう一方の腎機能が正常であると、無症状のまま尿管閉塞に気づけない場合もあります。

治療

治療には、内科治療と外科治療があります。

内科治療

もう一方の腎臓から尿が出ていて、血中カリウム濃度が高くなければ、内科治療を行う事があります。点滴や尿管を蠕動させる薬、鎮痛剤、炎症とるためステロイドなどを用いて、結石が膀胱に流れないか経過をみます。

外科治療

外科治療は、尿管切開、尿管膀胱新吻合、SUB(皮下尿管バイパスシステム)設置術があります。

当院では、なるべく尿管切開や尿管膀胱新吻合といった生体を利用した術式を選択します。SUB(皮下尿管バイパスシステム)設置術は、尿管結石が多発性である、狭窄を伴う尿管閉塞、尿管拡張伴わない尿管閉塞の場合など、尿管切開や尿管膀胱新吻合で対応が難しい場合に実施します。

実際に治療した症例

尿管切開術を行なった症例

症例1:チワワ、11歳、去勢雄

食欲低下が認められ、検査を行ったところ血液検査にて腎数値の上昇、左側腎臓にて腎盂拡張および近位尿管拡張が認められました。

  • イメージ 写真1
    エコー検査にて、腎盂拡張が認められた(矢印)
  • イメージ 写真2
    エコー検査にて、尿管拡張(矢印)および尿管内に結石(矢頭)が認められた。

エコー検査にて尿管結石は認められておりましたが、他に尿管結石がないか手術直前に尿管結石の数や位置把握のため、C T検査を実施致しました。

  • イメージ 写真3
    腎盂および近位尿管拡張(矢印)および尿管内に結石(矢頭)が1カ所認められた。左側尿管内に結石は1カ所であったため、尿管切開により結石の摘出を行いました。
  • イメージ 写真4
    尿管切開を行い、中から結石を摘出している。後日の結石成分分析により、シュウ酸カルシウムであった。
  • イメージ 写真5
    結石摘出後、尿管切開部の縫合を行った。
  • イメージ 写真6
    尿管切開前に腎瘻カテーテルを設置しており、そのカテーテルから造影剤を注入した透視検査画像。尿管結石を摘出し縫合した部位に支障なく、造影剤が膀胱へ流れている(矢印)。術後、腎臓数値は正常値になり、元気食欲も出て無事退院致しました。
症例2:アメリカンショートヘア、11歳、避妊メス

嘔吐および食欲低下で来院され、検査を実施したところ血液検査にて、腎数値の上昇、左側にて腎盂拡張および近位尿管拡張が認められました。

  • イメージ 写真7
    エコー検査にて、腎盂拡張が認められた(矢印)。
  • イメージ 写真8
    エコー検査にて、尿管拡張(矢印)および尿管内に結石(矢頭)が認められた。

エコー検査にて尿管結石は認められておりましたが、他に尿管結石がないか手術直前に尿管結石の数や位置把握のため、C T検査を実施致しました。

  • イメージ 写真9
    腎盂および近位尿管拡張(矢印)および尿管内に結石(矢頭)が1カ所認められた。

左側尿管内に結石は1カ所であったため、尿管切開により結石の摘出を行いました。

  • イメージ 写真10
    尿管切開を行っている。
  • イメージ 写真11
    尿管結石を摘出している。
  • イメージ 写真12
    尿管切開部を縫合している。術後、腎臓数値は正常値になり、元気食欲も出て無事退院致しました。

尿管膀胱吻合を行なった症例

症例3:チワワ、9歳、避妊メス

元気食欲低下、嘔吐で来院され、検査を実施したところ、血液検査において、CRPおよび腎臓数値の上昇が認められた。また、エコーにて右側腎盂拡張、尿管結石が多数認められました。

  • イメージ 写真13
    エコー検査にて、腎盂拡張が認められた(矢印)。
  • イメージ 写真14
    エコー検査にて、尿管拡張(矢印)および尿管内に結石(矢頭)が認められた。 手術直前に尿管結石の数や位置把握のため、C T検査を実施致しました。
  • イメージ 写真15
    右側腎盂および近位尿管拡張(矢印)および尿管内に計4個の尿管結石(矢頭)が認められた。

尿管内に複数の尿管結石が認められ、また近位尿管拡張および右側腎結石が多数認められおり、結石による尿管閉塞の再発を軽減する目的で、拡張した尿管膀胱新吻合術を実施致しました。

  • イメージ 写真16
    右側尿管が拡張しているところで、結紮離断を行っている。
  • イメージ 写真17
    近位尿管に切れ目を入れて、断端を扇型にしている。
  • イメージ 写真18
    近位尿管断端から腎臓に向けてカテーテルを挿入すると、膿性の濁った液が出てきており、感染による腎盂腎炎が生じていた。
  • イメージ 写真19
    膀胱切開を行い、近位尿管断端をモスキートで膀胱内に引き込んでいる。(矢印:尿管、矢頭:膀胱)
  • イメージ 写真20
    膀胱粘膜と尿管粘膜を縫合し、その後カテーテルで通過性を確認している。
  • イメージ 写真21
    膀胱切開部の縫合を行い、その後常法に従って閉服した。

術後、腎臓数値は正常値になり、元気食欲も出て無事退院致しました。

症例4:日本猫、5歳、避妊メス

元気食欲低下、嘔吐で来院され、検査を実施したところ、血液検査において、腎臓数値の上昇が認められた。また、エコーにて左側腎盂拡張、尿管結石が多数認められました。

  • イメージ 写真22
    エコー検査にて、左側腎盂拡張が認められた(矢印)。
  • イメージ 写真23
    エコー検査にて、左側尿管拡張(矢印)および尿管内に結石(矢頭)が認められた。

手術直前に尿管結石の数や位置把握のため、C T検査を実施したところ、尿管遠位にて尿管結石が1つ閉塞しておりました。遠位尿管はかなり細く、また腎臓内に多数結石が認められていたため、結石による尿管閉塞の再発を軽減する目的で、尿管膀胱新吻合を実施致しました。

  • イメージ 写真24
    尿管膀胱新吻合実施後の写真(矢印:尿管、矢頭:膀胱)術後、腎臓数値は正常値になり、元気食欲も出て無事退院致しました。

SUB(皮下尿管バイパスシステム)設置術を行った症例

症例5:日本猫、9歳、避妊メス

既往歴として、3年前に左側尿管結石が認められ、尿管切開術により結石摘出を実施した症例でした。再度左側腎結石が尿管に流れてしまい、閉塞を生じ嘔吐、元気・食欲低下で来院されました。以前の尿管切開により、左側尿管と周囲組織の強く癒着が認められ、結石部位へのアプローチが困難であったため、SUB(皮下尿管バイパスシステム)設置術を実施致しました。

  • イメージ 写真25
    術後レントゲン画像。腎臓から膀胱につながるSUBシステムが認められる。

術後、腎臓数値は正常値になり、元気食欲も出て無事退院致しました。術後は、1ヶ月に1度バイパスラインの洗浄を実施しております。人工物設置は、この様に術後定期的なケアが必要となります。

「若い猫ちゃんだが、慢性腎臓病と診断受けている。」
「尿管結石と診断を受けている。」

などでお困りの際は、当院に気兼ねなくご相談下さい。

イメージ

047-409-3906
(祝日、日曜日午後休診)