会陰ヘルニアとは、お尻の筋肉群が萎縮し、筋肉間の隙間(ヘルニア孔)に直腸が入り込み、直腸が蛇行し、糞塊の停留、排便障害を引き起こす疾患です。重度になると、膀胱や前立腺、小腸が会陰部に脱出し、腎不全や腸閉塞が引き起こされ、重篤な状態に陥る事もあります。
内科療法は、排便困難に対して便をゆるくする薬や食事を用いた、対症療法となります。それでも、排便困難な場合、ヘルニア孔を塞ぐ外科手術が必要となります。
会陰ヘルニア整復術は、ヘルニアの程度によりますが、再発率ならびに合併症発症率が高いため、様々な手術方法が開発改良され、報告されています。
当院は、その中から「ポリプロピレンメッシュを用いた解剖学的整復法」を実施しております。ポリプロピレンメッシュは、人医療にて鼠径ヘルニアの整復術にも用いられている人工素材です。以前の、萎縮した筋肉同士を縫合する方法や別の部位の筋肉を移動させる方法の再発率が24.1%に対し、ポリプロピレンメッシュ法の再発率は5.6%という報告があり、当院はヘルニアの重症度によりますが、再発率がより低い、ポリプロピレンメッシュ法を選択しております。また去勢手術、状況に応じて結腸固定、膀胱固定を組み合わせて行なっております。
治療 1
ミニチュアダックスフンド、12歳、未去勢雄です。排便困難と排便時に痛がって吠えるという事で来院されました。治療 2
左右のヘルニア孔(筋肉間の隙間)にアプローチ後、恥骨(骨盤の一部)の下にポリプロピレンメッシュを通します。治療 3
左側にて、萎縮した筋肉間の大きな隙間と、奥に結腸が認められます。治療 4
萎縮した筋肉の代わりとなるように、メッシュを周囲組織に縫合しました。治療 5
術創縫合と巾着縫合後です。肛門が中心へ戻っています。治療 6
術後の写真です。術前に比べお尻の膨らみも無く、肛門が中心に戻っています。排便もスムーズに戻り、排便痛も無くなったため、オーナー様も満足されています。現在、術後1年を経過していますが、再発なく良好に過ごしております。
「排便困難」、「お尻が膨らんでいる」、「会陰ヘルニアと診断を受け、手術を検討しようか迷っている」などお困りの際は、当院に気兼ねなくご相談下さい。