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口が痛くて食べれらない、流涎が見られる(猫の歯肉口内炎)

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case5.口が痛くて食べれらない、流涎が見られる(猫の歯肉口内炎)

猫の歯肉口内炎とは

猫の歯肉口内炎は、歯肉および口腔粘膜の慢性炎症性疾患です。また、口腔の後部粘膜に赤み、潰瘍、肉芽様組織の増生が認められ、症状は口の痛みのため、流涎(ヨダレが垂れる)、採食困難、口を気にする動作が認められます。重度の場合は、食欲不振に伴う体重減少も認められます。原因は、口腔内細菌やウイルスの関与、免疫反応の異常などが考えられているが、まだハッキリ分かっておりません。

猫の歯肉口内炎に対する治療

治療は、内科治療と抜歯処置による外科治療があります。内科治療は、一時的に症状の改善が得られるものの、完治は見られず、投薬をやめると再び症状が悪化し再発します。

内科治療

スケーリング(歯石除去)などの口腔内清掃、抗菌薬に合わせてステロイドまたは消炎鎮痛剤、インターフェロン、シクロスポリンといった免疫抑制剤(全顎抜歯が行われていない場合の使用は、推奨されていない)などが挙げられます。完治目的ではなく、ステロイドを2-3日1回投与など症状が出ない範囲でコントロールする目的で投薬します。投薬無しで完治を目指す、内科治療ではコントロールが困難な場合は、外科治療(抜歯処置)があります。

外科治療(抜歯処置)

外科治療は、全臼歯抜歯と全顎抜歯があります。全臼歯抜歯は、犬歯後方の前臼歯や後臼歯といった全ての奥歯を抜歯する方法です。1つの報告によると、全臼歯抜歯行った猫のうち、60%が完治し、著名な改善が認められたのが20%、わずかに改善が得られたものを含めると有効率は93%で、全く反応しなかったものが7%であったとの事です。さらに全臼歯に加えて犬歯や切歯を含めると、全顎抜歯となります。先程とは別の報告によると、全顎抜歯の治療効果は臨床的改善を含めて90-95%との事です。

以上を踏まえて当院では、いきなり全顎抜歯することは侵襲が大きく、下顎犬歯の抜歯時に顎骨骨折のリスクもあるため、まず全臼歯抜歯を実施し、数ヶ月経過を確認し、治療反応が不十分であれば、残りの歯を全て抜歯(全顎抜歯)する場合が多いです。また、外科治療前にできるだけ安全に抜歯するためCT検査を実施し、歯根の状態を把握し、歯周病による歯槽骨の吸収、根尖部の病巣、歯根と歯槽骨の骨性癒着、難抜歯になる可能性があるか、など評価しています。外科治療(抜歯処置)は、投薬が難しい場合、完治を目的としたい場合、内科治療でコントロールが難しい場合の症例に対し、とても有効と思われます。

実際に治療した症例

症例1:日本猫、7歳、去勢雄

半年前から口を気にして手でこすり、流涎が認められていた。ここ最近さらに悪化し、口の疼痛により食欲不振が認められるため、当院に来院されました。まずは内科治療として抗生剤、ステロイドの投薬を実施し改善が認められました。その後ステロイドを漸減したが、2日1回の投薬で症状が再発しました。そのため、第一段階として、全臼歯抜歯、スケーリング(歯石除去)、ポリッシング(研磨処置)を実施しました。

  • イメージ 全臼歯抜歯を行う前の口腔内写真:口腔後部粘膜に炎症と肉芽組織の増殖が認められる(※)。また、臼歯に歯石と歯肉炎が認められる(矢頭) 。
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  • イメージ 全臼歯抜歯を行った後の口腔内写真:上下左右ともに全臼歯抜歯を実施し、その後吸収糸で縫合を行った(矢頭)。
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  • イメージ 全臼歯抜歯実施10ヶ月後の口腔内写真:以前に認められた口腔後部粘膜の炎症や肉芽組織の増殖が消失し、赤くただれていた粘膜の色は、正常の粘膜色に落ち着いている(※)。外科治療後、ステロイドなどの投薬は全く必要なく、良好な経過を過ごしている。

「口を痛がっている」「口を気にして流涎が認められる」「口が痛くて食べられない」「猫の歯肉口内炎と診断され、薬でコントロールできない」などでお困りの際は、当院に気兼ねなくご相談下さい。

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(祝日、日曜日午後休診)