上顎に穴が開いている(口蓋裂)

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case4.上顎に穴が開いている(口蓋裂)

口蓋裂とは

口蓋は、切歯骨、上顎骨、口蓋骨を基礎に横行する口蓋ヒダをもつ硬口蓋、その後部の口腔と咽頭を隔てる筋膜性のヒダである軟口蓋から構成されています。口蓋裂(口蓋欠損)とは、これら硬口蓋や軟口蓋において、先天性または後天性に欠損が生じている状態をいいます。また、硬口蓋に生じた口蓋裂を硬口蓋裂、軟口蓋に生じた口蓋裂を軟口蓋裂といいます。疫学的に犬では、フレンチブルドック、シーズー、ボクサー、ブルドック、ペキニーズなどの短頭種に多くみられ、ダックスフンド、ミニチュアシュナウザー、コッカースパニエル、ビーグルに、猫ではシャムで比較的よくみられます。

症状は認められることが少ないが、口蓋裂では、哺乳困難、くしゃみ、鼻汁、咳、呼吸困難、成長不良、哺乳中の鼻腔からミルクの排出、飲食物の鼻腔への逆流、および誤嚥などがみられます。原因として、先天性は遺伝的に生じ、後天性は高所からの落下、感電、交通事故、口腔内異物、口腔内腫瘍に対する放射線治療、上部気道感染症などが挙げられます。

口蓋裂(口腔欠損)に対する治療

口蓋裂(口腔欠損)は、口腔と鼻腔が直接連絡している場合では、誤嚥性肺炎を起こす危険性があり、外科的整復が必要となります。口蓋裂の手術には、主にダブルフラップスライド法やオーバーラップ法があります。口蓋裂が認められた部位の鼻腔側と口腔側にメスで粘膜を分離し、新鮮創にして鼻腔側と口腔側をそれぞれ縫合します。口蓋の大きさや部位によって、フラップ回転法、スプリットUフラップ法などを用います。これらの手術が適応できない症例は、歯科用材料を用いて欠損部を閉鎖する口蓋キャップ法があります。

実際に治療した症例

症例1:日本猫、6ヶ月、雌

家に来た頃より、くしゃみ鼻汁が続いており、内科治療で改善があまりため、当院に来院されました。身体検査にて、口蓋中央に欠損した穴が認められ、先天性による口蓋裂と診断しました。避妊手術と同時に、口蓋裂に対してダブルフラップスライド法による整復を実施しました。

術後、口蓋裂は整復癒合し、くしゃみや鼻汁もなくなり完治しました。今回のくしゃみや鼻汁は、通常猫カゼと言われているウイルス性鼻炎ではなく、口蓋裂による症状と思われます。その後再発なく、経過良好に過ごしております。

  • イメージ 口蓋中央に欠損した穴が認められている(矢頭)。
  • イメージ 欠損穴に対して左右頭尾側方向に、欠損部辺縁と左右の口蓋側歯肉のすぐ内側の口蓋粘膜を切開(矢印)します。次に大口蓋動脈および小口蓋動脈を損傷させないように、骨膜剥離子を用いて口蓋粘膜を口蓋の骨から剥がし、左右の口蓋フラップ(※)を作成します。続いて欠損穴に対して吸収糸を用いて縫合閉鎖しています(矢頭)。
  • イメージ 術後1年の口腔内写真です。穴は完全に塞がって口蓋裂は整復癒合し、くしゃみや鼻汁もなくなり完治しております。その後再発なく、経過良好に過ごしております。

「くしゃみ、鼻汁が続いている」「口蓋裂があると言われた」などでお困りの際は、当院に気兼ねなくご相談下さい。

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047-409-3906
(祝日、日曜日午後休診)