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腹部

CT検査-症例:腹部

case1

主 訴 3日前から嘔吐、食欲不振
プロフィール 日本猫、3歳、去勢雄
診 断 異物による腸閉塞
検査所見
  • レントゲン検査にて、腸閉塞を示唆する小腸の拡張が認められました(矢印)。
  • 腹部超音波検査にて、空腸もしくは回腸領域の腸管内に液体貯留(◇)とシャドー(影)を引く内容物が認められました(矢印)。
  • 無麻酔CT検査にて、小腸領域に1カ所腸内異物による腸閉塞が認められました(矢印)。その後、全身麻酔をかけて腸切開を実施致しました。
  • イメージレントゲン写真
  • イメージ超音波画像
  • イメージCT画像(体軸断面)
  • イメージCT画像(冠状断面)

case2

主 訴 2週間前からの嘔吐、食欲低下。
他院にて膵炎疑いで治療しているが、改善認められず。
プロフィール スコティッシュフォールド、2歳、去勢雄
診 断 ひも状異物による腸閉塞
検査所見
  • レントゲン検査にて、腸閉塞を示唆する小腸の拡張(白矢印)及び小腸内に涙滴状のガス陰影(黄矢印)が認められました。
  • 腹部超音波検査にて、十二指腸及び空腸もしくは回腸領域に細径のシャドーを伴う消化管内容物(白矢印)及び波状の腸壁が認められる(黄色矢印)。
  • 無麻酔CT検査にて、十二指腸から空腸にかけて、腸全体が波状に蛇行し、腸管自体も拡張しているため、胃、十二指腸、空腸におけるひも状異物による腸閉塞が疑われました(黄色矢印)。その後、全身麻酔をかけて腸切開及び内視鏡による摘出を実施致しました。
  • イメージレントゲン写真
  • イメージCT画像(冠状断面)
  • イメージ超音波画像(横断像)
  • イメージ超音波画像(縦断像)

CT検査は、異物である事の確認、及び異物が1カ所のみなのか、胃内含めて複数存在するのかを把握するために有用と考えています。動かない子であれば、無麻酔で撮影も実施可能で、体に負担をかけずに調べる事が出来ます。

case3

主 訴 腹腔内腫瘤、食欲低下。
プロフィール ジャックラッセルテリア、8歳、去勢雄
診 断 腎臓腫瘍(上皮性悪性腫瘍)
検査所見 右腎臓領域に巨大腫瘤病変が認められ、一部が後大静脈内に浸潤している(黄矢印)。胃や小腸が腫瘤によって、圧排されている(黒矢印)。細胞診より、悪性上皮系腫瘍と診断致しました。
  • イメージCT画像(体軸断面)
  • イメージCT画像(矢上断面)
  • イメージCT画像(体軸断面)

本ケースの様な腹腔内腫瘤病変の場合、腫瘤の由来組織の確定(どこの臓器が腫瘍化しているのかを知る)及び、外科的切除が可能であるか、転移病巣があるのかを調べるために、CT検査は非常に有用であると思われます。
今回のケースでは、周囲臓器との癒着、後大静脈への浸潤が認められるため、外科切除はかなり困難で、高いリスクがあると判断致しました。現在、分子標的薬、NSAID’s、消化管運動改善薬といった緩和的内科治療を行っており、食欲や元気も良好に過ごしています。

case4

主 訴 元気食欲廃絶、嘔吐。
プロフィール 日本猫、4歳、避妊雌
診 断 急性腎不全を伴う、結石による左右尿管閉塞
検査所見
  • 腹部超音波検査にて、左右水腎症および水尿管が認められる。左尿管内に1.5mm大、右尿管内に1mm大の尿管結石(黄矢印)および尿管(黒矢印)が認められる。
  • CT検査にて、右尿管結石は、右腎盂から1.8cm尾側の位置に確認(青矢印)、左尿管結石は、尿管膀胱吻合位置から2.0cm頭側の位置に確認された(赤矢印)。腎瘻カテーテルから注入した造影剤が、どちらも通過障害を起こしていたため、結石による尿管閉塞が起きている事が確認された(白矢印:尿管)。
  • 本症例は、急性腎不全を起こしていたため、まず腎臓にカテーテルを設置し、尿管を介さず、直接腎臓からカテーテルにより体外へ尿を排泄させました。その後、腎後性腎不全のコントロールが可能であったため、CT検査および腎臓近くに位置する右尿管結石に対しては尿管切開術、膀胱近くに位置する左側尿管結石に対しては尿管転植術を実施しました。術後経過は良好で、結石はどちらもシュウ酸カルシウムでした。
  • イメージ超音波画像(右腎臓)
  • イメージ超音波画像(右腎臓)
  • イメージ超音波画像(右尿管)
  • イメージ超音波画像(左尿管)
  • イメージCT画像(右尿管)
  • イメージCT画像(左尿管)
  • イメージ尿管結石
  • イメージ左尿管膀胱転植術

尿管結石はかなり小さいため、手術中肉眼で結石を発見する事が容易でないケースがあります。また、尿管結石は超音波検査で発見する事が可能な疾患ですが、本症例へのCT検査の実施は、左右結石の位置を明確にし、手術中、結石発見の一助となりました。

case5

主 訴 肝膿瘍(超音波検査、細胞診、培養検査にて診断済み)、発熱
プロフィール ミニチュアダックスフンド、12歳、避妊雌
既往歴 リウマチ様関節炎のため、免疫抑制剤およびステロイド投薬
診 断 肝膿瘍(多発性)
検査所見
  • 左右の肝葉に、内部隔壁を有し、造影CTでリング状の造影増強効果を示す、多発性嚢胞状結節が認められる。
  • すでに肝膿瘍と診断していた症例でしたが、外科切除適応かを見極めるため、CT検査を実施致しました。多発性に病巣が認められたため、内科療法で治療し、今では再発無く元気に過ごしています。
  • イメージCT画像(冠状断面)
  • イメージCT画像(冠状断面)
  • イメージCT画像(冠状断面)

case6

主 訴 肝臓腫瘤(他院よりCT検査依頼)
プロフィール ミニチュアダックスフンド、10歳、去勢雄
診 断 肝細胞癌(肝臓外側左葉
検査所見 肝臓外側左葉の基部より発生した巨大腫瘤病変が認められる(黄矢印)。その他、肝臓内腫瘤病変および転移所見は認められませんでした。その後、ホームドクターにて外科切除を実施致しました。
  • イメージCT画像(体軸断面)
  • イメージCT画像(冠状断面)

case7

主 訴 肝臓腫瘤(他院よりCT検査依頼)
プロフィール ボーダーコリー、7歳、雄
診 断 肝細胞癌(肝臓内側左葉)
検査所見
  • 肝臓内側左葉より発生した巨大腫瘤病変が認められる(黄矢印)。腫瘤病変と周囲組織の境界は明瞭ですが、一部胃底部と癒着している可能性がありました(黒矢印)。
  • その他の肝臓内腫瘤病変および転移所見は認められませんでした。その後、ホームドクターにて外科切除を実施致しました。
  • イメージCT画像(体軸断面)
  • イメージCT画像(冠状断面)

肝臓は、6つの葉に分かれています。腫瘤病変が多発性であったり、尾状葉(背中側の葉)由来で後大静脈や大動脈を巻き込んでいる場合には、手術不適となるケースがあります。周囲臓器との関係性を含め、外科切除適応かの判断や転移病巣の有無を調べるために、CT検査は有用であると思われます。
今回のケースのように先生方からご紹介頂き、先生やオーナー様の希望に応じて、治療はホームドクターで行って頂くケースもあります。

case8

主 訴 血尿、前立腺腫大
プロフィール シーズー、11歳、雄
診 断 前立腺癌
検査所見
  • 前立腺が左右対称性に腫大し、隣接する膀胱頚部において膀胱壁が全周性に肥厚している(黄矢印)。
  • 左側において、水腎症および水尿管が認められ、左側尿管は膀胱壁肥厚部へ連続していることから、前立腺腫瘍による左側尿管の閉塞が疑われる(黒矢印)。
  • 左右内側腸骨リンパ節(◇)、及び下腹リンパ節(◇)の腫脹が認められ、リンパ節転移が強く疑われる。
  • 本症例は、カテーテル吸引による前立腺細胞診、リンパ節における細胞診を実施したところ、どちらも同様の上皮系細胞が採取され、前立腺癌と診断致しました。
  • イメージCT画像(体軸断面)
  • イメージCT画像(冠状断面)
  • イメージCT画像(冠状断面)
  • イメージCT画像(体軸断面)

前立腺腫瘍は、腺癌と移行上皮癌が多く認められます。これらは病理検査でも鑑別が困難なケースがあり、予後が異なってきます。本症例は、既に多発性に転移を起こしていたため、腺癌が疑われ、予後は良くない事が予測されました。そのため緩和療法として、NSAID’sや鎮痛剤といった内科療法で経過をみる事となりました。このように、全身転移の有無を調べるために、CT検査は有用であると思われます。

case9

主 訴 原因不明の腹水貯留(変性漏出液、他院よりCT検査依頼)。
プロフィール 日本猫、13歳、避妊雌
診 断 回腸(回盲部)における腺癌
検査所見
  • 腹水200mlを抜水後、CT検査を実施しました。回盲部において、回腸遠位の壁より連続性のある腫瘤病変(黄矢印)が認められました(白矢印:盲腸、黒矢印:回腸)。
  • その後、超音波検査でも確認出来たため、超音波ガイド下で細胞診を行ったところ、上皮系細胞が採取されたため、腺癌と診断致しました。
  • イメージCT画像(体軸断面)
  • イメージCT画像(冠状断面)
  • イメージ超音波画像
  • イメージ細胞診写真

腹水の原因は、性状や細胞を確認する事により絞られます。本症例は、変性漏出液という性状のため、肝臓疾患や血栓症などによる門脈圧亢進症、右心不全、腫瘍などが挙げられます。心疾患が否定的であれば、CT検査はこれらを鑑別するために有用な検査の1つと考えられます。今回、胸部やリンパ節など転移所見は認められなかったため、積極的治療をホームドクターで行って頂いております。

case10

主 訴 腰臀部皮下腫瘤(血管肉腫、他院にて診断済み、CT検査依頼)。
プロフィール コーギー、6歳、去勢雄
診 断 血管肉腫(他院にて診断済み)
検査所見
  • 右腹壁由来と思われる腫瘤病変(黄矢印)は、右深腸骨回旋動脈(赤矢印)、第7腰椎横突起、右腸骨(青矢印)を巻き込んでいる。
  • 胸部および腹部に転移の徴候は認められない。
  • イメージCT画像(体軸断面)
  • イメージCT画像(冠状断面)

皮膚の下にある皮下腫瘤は、触って存在に気づく事が出来ます。しかし、どこまで奥に入り込んでいるか、レントゲンや超音波検査では分からない場合があります。CT検査は、病変の広がりや転移の有無を確認するのに有用な検査です。本症例は、動脈や背骨、骨盤の一部を巻き込んでいるため、切除は容易ではありません。ホームドクターとよく相談して治療を行って頂いております。

case11

主 訴 腹腔内腫瘤(他院よりCT検査依頼)。
プロフィール 雑種犬、14歳、避妊雌
診 断 後腹膜腔腫瘤(血管肉腫疑い)
検査所見
  • 腫瘤(黄矢印)は下行結腸を除く腹部臓器を頭側へ圧排し、大動脈(赤矢印)、後大静脈(青矢印)、左尿管(白矢印)を巻き込んでいる。
  • 腫瘤内部は低濃度(30HU)であり、超音波検査にて血様貯留液で満たされている。
  • 本症例は、腫瘤の内容物が血様の貯留液で満たされていたため、組織生検は行わず、細胞診のみ実施しました。血管肉腫を疑う細胞が採取されました。外科切除は不可能なため、ホームドクターにて緩和治療を行っております。
  • イメージCT画像(体軸断面)
  • イメージCT画像(体軸断面)
  • イメージCT画像(冠状断面)
  • イメージ細胞診写真
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