従来、開腹手術は視野や操作性を良くするため、大きくお腹を開けて行われます。腹腔鏡手術は、2-10mmの傷口数カ所で行える手術です。
切開部にトロッカーという筒状の器具を設置し、CO2ガスをお腹に送気しお腹の中に空間を作ります。細いカメラや器具をトロッカー通してお腹の中に入れて、モニターを見ながらお腹の中で手術を行います。その後、切除した物を小さな傷口から体外へ出します。
膀胱切開(膀胱結石摘出術)は、腹腔鏡補助下で膀胱一部を体外へ出し、1cmほど膀胱切開を行った後、膀胱を腹壁に固定します。膀胱切開部にカメラを挿入して石の確認を行い、鉗子で石を摘出したり、サクションという吸引管で石を吸い取り、石を摘出します。
腹腔鏡補助下膀胱切開(膀胱結石摘出術)は、小さな術創1-2カ所で実施する事ができます。
膀胱内に生理食塩水を注入し、膀胱を拡張させ、膀胱頭側先端の位置を確認し、1cm切皮している。
膀胱と腹壁を固定した後の写真
膀胱切開部にカメラスコープ(矢頭)と吸引管(矢印)を挿入し、結石を吸引している。
カメラで膀胱内を観察し、尿でまだ膀胱内が少し濁っているが結石が認められる。
吸引管(サクション)で結石を吸引しようとしている。
吸引後、まだ砂粒状の結石が残っている(矢頭)。この様な砂粒状の結石は、開腹術による肉眼では見落としやすく、結石取り残しの原因になりうる。その後、更に吸引管で結石を吸引した。
膀胱内全ての結石が無くなっているのを確認している。
術中にCT検査を実施し、尿道や膀胱内に結石が無いのを確認後、膀胱切開部縫合や漏れがないかリークチェックを行っている。
術後術創写真。腹腔鏡補助下膀胱切開術の多くは1cmの小さな術創1つで手術する事が可能であり、開腹術に比べてかなり低侵襲である事が分かります。
通常、膀胱切開術における合併症の一つに「結石の取り残し」が言われています。腹腔鏡を用いる事は、低侵襲性だけでなく膀胱内の細かい砂粒や一部尿道内も観察ができるため、石や砂粒を残すリスクが無くなるというメリットが大きいと言われています。細かい砂粒が核となり、結石の再発が生じやすくなるため、腹腔鏡を用いる事で、結石の再発予防にもつながる可能性を一部のアメリカ外科専門医で言われています。
更に当院では、結石の取り残しが無い様、術中にCT検査を実施し、徹底して手術を行っております。
膀胱結石が認められ内科治療では溶解せず、膀胱炎症状が続いている場合、尿道閉塞を生じた事がある場合は、外科治療が適応となります。また、療法食を食べていても結石が再発してしまい、手術を繰り返し行わなければならないケースもあります。その様な子達に、腹腔鏡による低侵襲性手術をご希望の方は、是非当院へご相談下さい。