肛門周囲腺腫瘍は、肛門周囲腺由来の腫瘍となります。肛門周囲腺は名前のとおり、肛門の周囲に存在しますが、包皮、尾、後肢、体幹部にも存在する非分泌性の皮脂腺です。そのため、腫瘍の多くは肛門周囲に発生しますが、その他の部位にも発生します。
肛門周囲腺腫瘍は、良性腫瘍(肛門周囲腺腫)、低悪性度腫瘍(肛門周囲腺上皮腫)、悪性腫瘍(肛門周囲腺癌)に分類されます。これらは細胞診では鑑別する事が出来ないことがあり、最終的に組織検査で確定診断をつける事が出来ます。
①肛門周囲腺腫:未去勢雄に多く、テストステロンが関与していると言われています。外科切除に加えて、去勢手術を実施します。
また、未去勢に多いため、腫瘍発生の予防目的で去勢手術を受けて頂く事も1つだと考えられます。
②肛門周囲腺上皮腫:低悪性動腫瘍で、再発やまれに転移を生じる事がある腫瘍です。画像検査で転移が無ければ、外科手術で摘出します。
③肛門周囲腺癌:悪性腫瘍のため、局所浸潤性があり、また局所リンパ節などへの転移を生じる事もあります。画像検査で転移が無ければ、外科手術で摘出します。
実際に治療した症例
肛門6時方向に腫瘤が認められるとの事で来院。細胞診を実施したところ、肛門周囲腺由来の腫瘍が疑われました。
レントゲン検査および超音波検査にて、異常が認められなかったため、去勢手術と肛門腫瘤を切除いたしました。
腫瘤を切除し、縫合を行っている。
腫瘤は病理検査にて肛門周囲腺腫でした。また去勢手術も実施しており、再発もなく経過良好に過ごしております。
1年半前から肛門周囲、包皮に多発性腫瘤が認められるとの事で来院されました。細胞診を実施したところ、包皮腫瘤は上皮性悪性腫瘍疑い、肛門腫瘤は肛門周囲腺腫瘍が疑われました。
画像検査にて転移を疑う所見が認められなかったため、外科切除を実施いたしました。
病理検査にて、肛門腫瘤はいずれも肛門周囲腺上皮腫、包皮腫瘤は肛門周囲腺癌でした。完全切除で、脈管内浸潤やリンパ節転移は認められませんでしたが、腫瘍がやや大型であったため術後に補助化学療法を提示しましたが、ご希望ではなかったため、定期検査で経過を見ていく事となりました。その後も再発なく経過良好に過ごしております。
「肛門周囲に腫瘤(しこり)が認められる」
「尾、包皮に腫瘤(しこり)が認められる」
「肛門周囲腺腫瘍と診断された」
などでお困りの際は、当院に気兼ねなくご相談下さい。