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乳腺にしこりがある(乳腺腫瘍)

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乳腺腫瘍

乳腺腫瘍とは

乳腺腫瘍は、乳腺組織由来の腫瘍で、悪性と良性があります。犬では、40―50%が悪性で50−60%が良性とされています。また猫では、85―95%が悪性で、良性はまれとされています。
また、避妊手術の時期は、乳腺腫瘍発生率と関係があると言われているので、乳腺腫瘍予防のため、早期の避妊手術が望まれます。

  • 発生率
    初回生理前 0.05%
    1~2回目 8%
    2回目以降 26%
    3回目以降 予防効果なし
  • 予防率
    <6ヶ月 91%
    7~12ヶ月齢 86%
    13~24ヶ月齢 11%
    24ヶ月齢> 0%

乳腺に腫瘤が認められた場合、まず乳腺腫瘍が疑われるか細胞診を実施します。細胞診では、乳腺腫瘍である事は診断できますが、良性や悪性を診断する事はできません。しかしながら、犬の炎症性乳癌を含む高悪性度乳腺癌を疑う事は可能となります。
乳腺腫瘍と診断がついた場合、リンパ節や遠隔転移が疑われないかレントゲンおよび超音波検査を実施します。
画像上、転移所見が認められない場合、積極的治療として外科治療±補助化学療法が検討されます。

外科治療

・犬の場合:様々な術式があります。
①腫瘤切除(腫瘤のみを切除する)
②領域乳腺切除(腫瘤含めて乳腺を複数一緒に切除する)
③片側乳腺全切除(片側乳腺を全て切除)があります。

乳腺腫瘍の発生した大きさや位置、年齢やオーナー様の意向も含めて切除方法を決定します。
未避妊の場合、その後子宮蓄膿症になるリスクをなくす目的、また良性乳腺腫瘍の発生を抑える可能性があるため、当院では、同時に避妊手術実施を推奨しています。

・猫の場合:多くが悪性で良性はまれであり、猫の乳腺癌における腫瘍細胞のリンパ管内浸潤あるいはリンパ節転移が犬に比べてかなり高いため、腋窩リンパ節、副腋窩リンパ節を含めた片側乳腺全摘出もしくは両側乳腺全摘出が推奨されています。両側の場合、術後合併症発生率が高くなると報告があるため、片側全摘出を段階的に実施する事を推奨しております。

実際に治療した症例

症例1:ミニチュアダックスフンド、13歳、避妊雌(9歳時に子宮蓄膿症にて卵巣子宮摘出)

2年前から右側第2乳腺部に腫瘤が認められ、徐々に増大してきたとの事で来院されました。乳腺はもともと左右各4つ(正常は各5つ)でした。
触診により、右側第2乳腺部に12cmの大きな腫瘤、左側第2乳腺部に1cmの腫瘤が認められました。
細胞診にて乳腺腫瘍が疑われ、レントゲンおよび超音波検査にて右側腋窩リンパ節軽度腫脹を除き、転移を疑う所見は認められませんでした。
右側片側乳腺全摘出および左側第2乳腺部腫瘤切除を実施致しました。今回、腫瘤はかなり大きく、また超音波検査にて、右側腋窩リンパ節軽度腫脹が認められたため、右側片側乳腺に合わせて外側胸動静脈をランドマークに、右側副腋窩リンパ節および腋窩リンパ節の一括切除を実施しました。

  • 治療 腫瘤内に液体がかなり貯留していたため、手術前に抜水しました。
  • 治療 腫瘤から距離を測って皮膚切開をしている。
  • 治療 腫瘤の底部を、外腹斜筋の筋膜を剥がして切除している。
  • 治療
  • 治療
  • 治療 外側胸動静脈に沿って、右側副腋窩リンパ節および腋窩リンパ節(矢印)の一括切除を実施しました。
  • 治療 腫瘤があった部位は、縫合部に張力がかかるため、減張切開を実施した。

術後大きな異常無く抜糸を実施しました。
病理検査は、乳腺癌でした。完全切除で、脈管内浸潤やリンパ節転移は認められませんでしたが、腫瘍が大型である事、分裂像がやや多かったため、術後に補助化学療法を提示しましたが、ご希望ではなかったため、定期検査で経過を見ていく事となりました。その後も再発なく経過良好に過ごしております。

症例2:ミックス犬、9歳、避妊雌(6歳時に子宮蓄膿症にて卵巣子宮摘出)

1ヶ月前から左側第4乳腺部にできものが認められるとの事で来院されました。乳腺はもともと左右各4つ(正常より1つ少ない)でした。
触診により、左側第4乳腺部に6cm、他に0.5cmと右側第4乳腺部にも0.3cmの腫瘤が認められました。
細胞診より上皮系細胞集塊が認められ、乳腺腫瘍が疑われました。
レントゲンおよび超音波検査にて転移を疑う所見は認められなかったため、切除方法をいくつかご提示し相談したところ、左側第3、4乳腺切除と右側は腫瘤のみ切除する事となりました。

  • 治療 マーカーのラインに沿って皮膚切開を行っている。
  • 治療 浅後腹壁動静脈を超音波メス(ソノサージ)によりシーリングを行なっている。
  • 治療

病理検査は、乳腺癌でした。完全切除で、脈管内浸潤やリンパ節転移は認められませんでしたが、腫瘍が大型である事、分裂像が多かったため、術後に補助化学療法を提示しましたが、ご希望ではなかったため、定期検査で経過を見ていく事となりました。その後も再発なく経過良好に過ごしております。

症例3:ミックス犬、18歳、避妊雌(13歳の時に実施)

数年前より、左側第5乳腺に腫瘤が認められ、高齢のため経過観察していたが3ヶ月くらい前より増大してきたとの事で来院されました。
高齢であり、他院にて避妊手術時に全身麻酔で急変し、心停止しかけたとの事で経過を見ていたとの事でした。
左側第5乳腺部に11cm大の腫瘤が認められ、その他第3乳腺部に1.2cm大の腫瘤、右側第5乳腺部に1.0cm大の腫瘤が認められました。
細胞診にて、いづれも乳腺腫瘍が疑われ、レントゲン検査、腹部超音波検査にて転移を疑う所見は認められませんでした。

腫瘤がかなり大きく、立っている時に地面に接触してしまい、かなり生活の質が低下していたため外科切除を実施する事となりました。
切除方法は、①左側片側乳腺全摘出+右側第5乳腺腫瘤切除、②左側第3、4、5乳腺摘出+右側第5乳腺腫瘤切除、③それぞれ腫瘤のみ切除をご提示したところ、高齢で、以前他院にて麻酔で異常があったため、③それぞれ腫瘤のみ切除を実施する事となりました。今回、高齢であり全身麻酔量を減らすため、フェンタニルという麻薬性鎮痛剤を点滴で併用しながら手術を実施しました。

  • 治療
  • 治療
  • 治療
  • 治療 右側第5乳腺腫瘍はかなり大きく、出血を抑えるため、電気メスや超音波メス(サンダービート)といったデバイスを使用しながら切除致しました。
  • 治療 欠損した皮膚も張力がかかり過ぎない様に縫合致しました。
  • 治療 抜糸時の写真。大きなトラブルも無く抜糸致しました。

病理検査は、低悪性度の乳腺癌でした。腫瘍細胞は、マージン部や脈管内に認められず、分裂像も少なかったため、定期的な画像検査による経過観察と致しました。

症例4:柴犬、15歳、未避妊雌

11歳の時にお家へ迎え入れ、その時から乳腺に腫瘤が認められていた。昨日、腫瘤が増大しているのに気づき、来院されました。
左右乳腺は各4つ認められ(正常は、各5つ)、触診により左側第3乳腺部に2cmの腫瘤、左側第2―3乳腺部に1cmの腫瘤、右側第3乳腺部に0.6cmの腫瘤が認められました。

細胞診にて、いずれも乳腺腫瘍が疑われ、レントゲン検査、腹部超音波検査にて転移を疑う所見は認められませんでした。切除方法をいくつかご提示し相談したところ、左側第3、4乳腺切除、他は腫瘤のみ切除する事となりました。

  • 治療
  • 治療
  • 治療 左側第3、4乳腺切除後、同じ術創から、皮膚をめくって左側第2―3乳腺部腫瘤および右側第3乳腺部腫瘤を切除しました。
  • 治療 内側から腫瘤切除したため、術創は1カ所のみとなっています。
  • 治療 切除した左側第3、4乳腺。左側第3乳腺部に2cmの腫瘤が認められ、表面が自壊している(矢頭)。

病理検査は、低悪性度の乳腺癌でした。腫瘍細胞は、マージン部や脈管内に認められず、分裂像も少なかったため、定期的な画像検査による経過観察と致しました。

「乳腺部に腫瘤(しこり)が認められる」
「乳腺腫瘍と診断された」
などでお困りの際は、当院に気兼ねなくご相談下さい。

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(祝日、日曜日午後休診)